日時は退職日以前の一週間以内。ウィークデーの夜、二時間程度。場所は職場から遠くない宴会場で、坐り形式で、として、式次第は次のようになる。

  • 開会のことば
  • 主人公の上司の送別のことば
  • 主人公の謝辞
  • 乾杯花束贈呈、記念品贈呈
  • 歓談、余興
  • 再ぴ主人公の謝辞
  • 万歳三唱
  • 閉会のことば

送別会のムードを盛りあげるのも駄目にするのも主人公の退職民である。「大きな病いもせず無事に勤めぬくことができたのは最大の幸せです」「会社の発展になにがしかの貢献をしたと自負しております」と、胸を張れる挨拶はいくらでもあるはずなのに、やはり定年の淋しさは余人の想像を越えるものらしく、つい愚痴っぽく哀れっぽい挨拶になってしまう。ムードは間違いなく白ける。「ひどい会に出ちゃったね」「ぼやきたいのはこっちだよ」と、出席者は主人公を置いてきぼりにして、飲み食いと雑談巴専念してしまう。幹事は主人公の心構えについてよくよく本人と相談しておかなければならない。

感心したのは、広告会社の大先輩Mの挨拶だ。乾杯後もう一度立って、「私はこの会社に入ってよかった」と、なぜよかったのかの説明を前々と十五分間。それが業界の戦国史にもなっており、主だった出席者の手柄話しにもなっていて、飽かせなかった時である。「よい職場よい仲間を永遠の思い出として第二の人生を歩んで行きたいと思います」と結んだ時、感動の拍手鳴りやまなかったものである。又聞きだが、ある役所の退職民は開口一番「組合員なら六十歳まで勤めることができたのに、なまじっか役職にいるために五十七歳で肩を叩かれた」とこぼして、満座を白けさせたという。

送別パーティーである。賑やかなばかりでも片手落ちで、しんみりしたムードも欠かせない。主人公の言葉に、送る側の言葉に、送別会につき物の詩吟「滑城の朝雨…」に、ショパンの「別れの曲」に、後半部を全員で合唱する「アロハオエ」に、人々の目頭が熱くなるのも当然で、その種の感動的なしんみりムlドはよいのだが、しかし愚痴やぼやきは座を白けさせて救いようがないのである。